鏡よ、鏡この世で一番…

自作の小説の溜まり場

猫とメリーゴーランド

たまちゃん、お元気にしていますか。

虹の果ての世界は晴れていますか。

 

 

 

そう問いかけても返事はなかった。

 


あたりまえか。

 


たまちゃんのお墓に向かって話しかけても、しかたないって分かっていない。

 


そんな自分にどうしようもないやるせなさをおぼえた。

 

 

 

 

 

 

たまちゃんのお墓参りを済ませたし、そろそろ帰ろう。

ここにいると、なんだか憂うつになってくる。

 


たまちゃんが戻ってくれそうな気がしてしまうから。

 

 

 

 


そんなことを考えながら、たまちゃんのお墓に向かって手を合わせる。

 

 

 

 

 

 

そこまでは、いつも通りだった。

 

 

 

手を合わせたら、にゃあ  と聞こえた。

 


どこか懐かしくて柔らかいこの声は。

 

 

 

たまちゃんの声だ。

 


たまちゃん。

 

 

 

ずっと待っていたよ。

どこにいっていたの。

 

 

 

 


たまちゃんを撫でようとしたら、たまちゃんはふいっと避けた。

 


たまちゃん、どこにいくの?

 

 

 

逃げていくたまちゃんを追いかけていたら、そこには古いメリーゴーランドがあった。

 


たまちゃんはなんてことないようにひょいっとメリーゴーランドに乗った。

 


私もたまちゃんと一緒にメリーゴーランドに乗った。

 


たまちゃん、やっと会えたね。

 


たまちゃんは、 私の手をぺろぺろ舐めた。

 


私はたまちゃんの気が済むまで舐めさせた。

 


たまちゃんの柔らかくて温かいまっしろな毛並み。

 


ねぇ、たまちゃん。

 


そういって私は、たまちゃんに渡すはずだった赤い首輪をたまちゃんにつけようとしたら。

 

 

 

たまちゃんは、雪のようにぱらぱらと溶けた。

 


たまちゃんは溶けながらも優しく笑っていた。

 


私は、溶けゆくたまちゃんを撫で続けた。

 


たまちゃんは、私の手をぺろっと舐めてくれた。

 

 

 

いかないで、なんていえない。

 


代わりにまたここで会おうね。

 


そういってたまちゃんに赤い首輪をつけた。

 


ひらひらとたまちゃんは溶けていく。

 


手元には雪がかかった桜の花びらが残されていた。