鏡よ、鏡この世で一番…

自作の小説の溜まり場

嫌いのちに好き。

街中からあまい香りが漂ってくる。

それは好きな人にチョコレートを渡そうと浮き足立ってる女の子たちの香りだ。

 

 

 

好きな人、ねぇ。

 


嫌いで嫌いで仕方のない人ならいるけれど。

 

 

 

せっかくのバレンタインだし自分用のチョコレートでも買っていこう。

 


そうだ、ロイヤルブルーのリボンが綺麗なこのチョコレートにしよう。

 


そういえば、あいつ青が好きな色だっけ。

まあ、どうでもいいけど。

 


チョコレートを買って上機嫌で家に帰っていたら、青のジャンバーを着た男…あいつがうちの前でばったり会ってしまった。

 


ああ、もう。これだから家が隣の幼なじみは…。

 


しかめっ面をした私をみて『おいおい。そんな怒んなくてもいいだろ』って呆れた顔をしていた。

 


うるさい。私のことを告白してないのに振るという酷い振り方した癖に。

 


そんな私を気にせず、あいつは『ん?お前、それなに?もしかしてチョコ?』と目をキラキラさせながら聞いてきた。

 


そうだ、あいつチョコレート好きだった。

 


『なあ、お前、どうせあげるやついないんだろ?』って聞いてきた。余計なお世話だ。

 


『いないけど』ってぶっきらぼうに返したら、あいつはチョコレートを奪い取ってきた。

 


『なにするのよ?!』と私は叫んでいたら、あいつは『お前のチョコ欲しかったから』っていった。

 


はぁ!?

思わず、変な声が出た。

 


そんな私をみてあいつは笑っていた。

 


うるさい、うるさい。心臓がうるさい。

 


どうして、こんなに振り回されてばっかりで嫌いなのに、心臓がこんなにうるさいの。

 

 

 

うるさい心臓の音があいつに聞こえていないことをただただ祈っていた。