鏡よ、鏡この世で一番…

自作の小説の溜まり場

彼岸のあなたまで…

彼岸。悲願。此岸。

 


あなたにもういちど会えること、それが私の悲願。永遠に叶えられないねがい。

 


まだ夏の暑さが残る日差しを浴びて少し汗ばみながら野菜と花を買いに買い物に向かっていく。

出掛ける前にほんのり香る死の香りをしたあなたの遺影にそっとキスをする。

 


それが私の日課

 

 

 

買い物に出掛けて野菜も買えたし後は花を買うだけ。

 


花屋に向かおうとしたら、ふと一輪の彼岸花が目に止まった。

 


それは珍しいまっしろな彼岸花だった。

 


いまごろ 私が着るはずだった白無垢を思い出す。

 


思い出して白い彼岸花に涙を零してしまった。

 


そうしたら、白い彼岸花がくわっと開いて私を飲み込んで行った。

 


それから先のことは思い出せない。

 


ただ、気付いたら星すらもない真っ暗なところにいた。

 

 

 

なぜか赤い彼岸花のベッドで横たわっていた。

 


『お目覚めですか』とキョンシーがにゅっと出てきた。

 


びっくりした。

だって、急にキョンシーが出てきたのだから。

 


そんな私に構わずキョンシーは『さあさあ、新婦様そんな地味な出で立ちだと新郎様にがっかりされますよ』といって、おでこに貼っていた御札をまっしろな彼岸花のドレスに変えた。

 


まるで、シンデレラの魔法使いのよう。

 


目を輝かす私を気にせず キョンシーは『さあさあ、新郎様がおいでなすってますぞ』といって御札からあなたを呼び出した。

 


ああ、やっとあなたにもういちど会えた。

 


あなたは『おまたせ』といって私を抱きしめた。

 


私はあなたの胸で久しぶりに嗚咽をもらした。

 


こんなに嬉しくて泣くのははじめて。

 


その瞬間 彼岸花がひらひらと宙から降ってきた。

 


私たちがふたたび巡り会えたことを祝福するように。

 

 

 

 


あなたは、ごめんねごめんねと何度も何度も謝ってきたから私は『ねぇ、今キスして。』と、あまくおねだりしてみた。

 


あなたは、そっとキスをした。

 


やっと、悲願がかなった。

 


私は、ずっとあなたと一緒にいたい。

 


これからも。ずっと。

 

 

 

永遠にあなただけを想いつづけます。

 


もう離しません。

 

 

 

もう戻りません。